怒りのツボ・2
昨日、一定時間以上カメラを向けられると正太郎の「怒りのツボ」が押される、という話を書いたが、彼にはもっとテキメンに効く「怒りのツボ」がある。
そのツボは、車に乗っているときに押される。
正太郎は、ドライブ好きだ。ちょっと前までドライブシートを設置していたが、車に慣れたようなので、最近では後部座席にそのまま座らせることもある。
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走行中、正太郎は二本足で立ち、車の後ろや横を走り去る風景を眺めていることが多い。疲れると少し眠るが、気がつくとまた車窓を見つめている。
ゴキゲンな正太郎。しかし、ハンドルを握る私はちょっと憂鬱だ。というのも、この後、車の中が「あるもの」の洪水に見舞われることがわかっているから。
洪水がやってくるのは目的地にたどり着いたときだ。駐車スペースにバックで車を入れるべく、ギアを「R」に入れて、ポーンポーンと警告音が鳴り出したとたん……、
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怒りのツボON。
とにかくものすごいハイトーンボイスで吠えだすのである。バックの警告音に呼応するように連続して吠える、というより、悲鳴に近い。「やめて~っ、やめて~っ、やめて~っ」 と訴えているようにも聞こえる。
もし、正太郎が車に置き去りにされることを恐れているのであれば、バックの警告音を聞いたとたん、「もうすぐ車を止めるんだな! ボクも一緒に車の外に連れてって!」と叫んでいる、とも考えられる。しかし、私はこれまで一度たりとも正太郎を車に置き去りにしたことはない。他に考えられる原因も思い当たらず、さっぱりワケがわからない。
狭い密室で、キャン! ワンッ! キャン! ワンッ!と声を振り絞って連呼する正太郎。まさに、車中が正太郎の声の洪水に見舞われたような錯覚にとらわれるんである。
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ドアを開けても怒りがおさまる気配なし。
音圧で耳がツーンとなりながら、抱き上げて車から出す。何をして欲しいんだよ。車中にとどまりたいんでもなさそうだし、車から出たいってわけでもなさそうじゃないか。
マンションの駐車場で出会う人たちは、正太郎のこんな不思議な癖をご存知で、「あら、正ちゃんったらまた吠えてるのねえ」と笑われる。
ウケてよかったね、正太郎。でも私は、ウケをとるより穏やかなドライブを望んでるんだけど。
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